『Op.ローズダスト』読了

懸賞 2006年 08月 09日 懸賞

ようやく読み終わりました。
ある方面の方々からは「え?!今ごろ?」と突っ込まれそうではありますが。
わざわざサイン会に行ってサインしてもらった本ですよ。
それなのに何ヶ月も放りっぱなしですよ(苦笑)。
福井先生ごめんなさい。

でもどうにか読み終わったので、ネタバレ感想行きます。
が、その前にひとことだけ言わせて。

福井作品を未読の方は、これを読むより「亡国のイージス」を読め。

以上。





感想なんて、上のコメントだけでほとんど全てだと言っても過言ではないですね。
つまり「ローズダスト」は「イージス」の劣化コピーに過ぎないと。
思いっきり拡大コピーしているんで、用紙のサイズは大きくなったかもしれませんが、その分、画質は荒くなり、書かれているものが何だか読み取れません。
作者が伝えたいと思ったメッセージがこちらに伝わって来ないと言っても良いでしょう。

もちろん、私がそれを受け止めるだけの素養が無いと言われればそれまでです。
もっと、ちゃんと読めば分かる、と言われてしまったら仕方がないのですが。

でも、文章じゃないんですよ。
行間の中に詰まっている想いや情熱みたいなものが、確かに「イージス」や他の作品からは感じられるんです。
こちらが受け止めようとしなくても、雪崩のように押し寄せてきて、勝手に飲み込まれてしまうんです。

それが「ローズダスト」には全く感じられませんでした。
たった今、読んだばかりだというのに、思い返してみても、印象に残る場面や台詞がほとんど無いんです。
「イージス」は何度読んでも泣けるし、感動できるし、名場面も数え切れないほどあるというのに。


そもそも、「イージス」と比べることが間違っているのでしょうか?
でもこれだけ似たような人間関係、舞台設定を持ってこられたら、思い出さずにはいられませんよね。
私自身はもう「729」という数字を見ただけで思い出しちゃいますから。
比べるな、と言う方が無理な話です。

そうやって両者を比べてみると、明らかな違いが見えてきます。
それは、リアリティですね。

今回の「ローズダスト」は現実のお台場を舞台にしているから、本来ならよりリアリティが増すと思われますが、実際はそうではありませんでした。
どれだけTPexが爆発しようとも、お台場が沈もうとも、それが何?という感じにしか受け取れませんでした。
それこそテレビの画面の向こうを眺めているように。

これまでの福井作品はどんな荒唐無稽なストーリーであっても、無茶な設定であっても、それを納得し、受け容れられるだけの力がありました。
それは、あくまでも「状況」ではなく「人間」を描いていたからです。
どんな場所であっても、同じ「人間」のやることであれば、読んでいる私たちも、とても身近に感じられます。
作品の中で確かに生きている彼らが、泣き、笑い、怒り、戦う姿を見て、彼らの置かれている状況を、初めて受け止めることが出来るのだと思います。

「客観」「主観」と置き換えても良いですが。
客観は神の目線です。言ってしまえば作者の目線です。
でも私は作者の目線でストーリーを見たい訳ではありません。あくまでも自分の目で見たいのです。それが出来ないから、登場人物の目線ということになります。

それが今回は圧倒的に少なかったと思います。
テレビのコメンテーターがしゃべっている描写を何度も入れるくらいなら、登場人物同士の会話を入れるべきでしょう。
「だから日本はダメだ」的な繰り言を何度も入れられても、読んでいてうんざりします。またか、と思ってしまいます。

それならもっと主人公の朋希の想いや考えを見せて欲しいのです。
敵方の一功がどうしてこんなことをしたのか、こんなことになったのか。もっと深く掘り下げて欲しかったです。
キャラクターが全然見えて来ないから、誰に感情移入すれば良いかも分からずに、こちらは取り残されてしまいました。


それでも、そんな中で、私が印象に残っているシーンは、上巻ラスト付近で、勝良と朋希が対峙する所です。あの場面は見事でした。
というのも、それまでに勝良が留美のことを好きだと思っている場面があり、それゆえにあそこで勝良が留美をかばって残るのも納得できます。
そして一功もまた、仲間をそう簡単に見捨てるような人間ではないことが、すでに描写されているので、あそこで勝良を置いていくのは、どれだけの想いだったのか伝わってきます。
そしてもちろん、それに対する朋希の想いも。
だからこそ、この場面はとても印象的でしたし、感動もしました。

ここから一気に盛り上がるんだろうな、と期待すらしました。それは残念ながら、裏切られてしまうのですが。
ここでようやく見えたと思った「人間」が、また見えなくなってしまうんですね。

次に「人間」を感じさせてくれたのは、もう終盤、しかもローズダストの面々でした。
けなげに孤軍奮闘を続ける留美、それを置いていかなくてはいけない山辺、そして最後の最後で留美に逃げろという倉下。
彼らの姿は本当に等身大の人間で、どうしようもなく感情移入してしまいました。
留美の一挙一動にハラハラして、負けるな、と思ってしまいました。
本来はそれを追い詰める側の目線で見るべき所なのにね。
とはいえ、この時に一功はどこで何をしているのか全く分からず、とんだリーダーもあったもんだと思いましたが。

何にしても、朋希と一功の結びつきや、お互いに対する想いを、もっとしっかり描いて欲しかったです。
少なくともローズダストのメンバーが朋希になら殺されても仕方がないと思える程のものが、朋希のどこにあったのか。
せめて朋希と一功を同等くらいのレベルに出来なかったものかと思います。
あまりにも朋希の影が薄く、存在感が皆無です。
情けなくて無力な朋希が成長していく物語だとするなら尚更、朋希の視点で見る描写がもっともっと必要だったでしょう。

如月行という存在が、とてつもなく魅力的で稀有なキャラクターであることは言うまでもないですが、だとしても、丹原朋希もそれに比肩する魅力を持ち得たかもしれないんです。
如月行ほどには、しっかりと描いてもらえなかった不運というしかありません。


私はハリウッド的なこけおどしや、パニックムービーのような話が読みたい訳ではなくて、あくまでも地に足の付いた人間たちのドラマが見たいんです。
物語の中であっても、確かにそこに息づいている彼らが、織りなす人間模様が好きなんです。
それが今までの福井作品にはしっかりと存在していたと思うので、次はぜひそういうものをよろしくお願いします。

あ、そうそう。最後に一言これだけは言いたい。
今回、渥美さんはどこで何やってたんだー!!

以上(笑)。
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by mgear | 2006-08-09 22:46 | 小説

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