『マレー鉄道の謎』読みました。

懸賞 2005年 06月 13日 懸賞

『マレー鉄道の謎』(有栖川有栖)を読了しました。
久しぶりの火村&アリスシリーズの長編だし、
「日本推理作家協会賞」も取ったみたいだし、
これはちょっと期待しちゃおうかな、と思っていたのですが。




 大丈夫ですか?ネタバレですよ。

 ミステリーのネタバレですよ?

 メイントリックや犯人に直接的な言及はしていませんが、察しの良い人なら気が付いちゃうかもしれないし。
 気をつけてお読み下さいませ。

 というか、「解説」にメイントリックや犯人がはっきり書かれているのって、どうなの?あれはOKなのですか?少なくとも私が作者だったら怒るよ(笑)。
 いくら最初に「ネタバレしています」と注釈があったとしても、たまたまそのページを開いて見ちゃう人だっているかもしれないし、注釈を見落とす人もいるかもしれないしね。
 「解説」から最初に読む方はお気を付けて下さい。

 なんか最近そういうの多いような気がするのですが、あくまでも文庫の巻末の「解説」だったら、なるべくネタバレしないように、それでいて本書の魅力を伝えるように努力すべきなんじゃないのかな。
 「書評」だったら違いますよ。ミステリのトリックも何もかも含めて論評するのが正しいと思いますが、「解説」は違うよなぁ…。

 ミステリはなるべく予備知識を入れないで読むのが一番だと思うしね。トリックのネタバレなんて厳禁だよ…。
 「あとがき」から読むタイプの人間である私は、つい「解説」も先に読んでしまいがちなので、すごく気になっているのでした。

 えーっと、そんな訳なので(笑)。
 この先は、必ず本書を読み終えた方だけお読み下さい。
 まだ読んでいないという方は、この先の文章も、文庫に付いている「解説」も読まずに、とにかく本編を読んで下さい。
 その後にお会いしましょう(笑)。


 大丈夫ですか?
 この先に進んでも後悔しませんか?


 はい、それでは行きますよ。
 愚痴というかぼやきというか、そんなコメントばっかりですが(苦笑)。

 だってね、久しぶりの「火村&アリス」シリーズ長編なんですよ。
 しかもシリーズ最長で、「日本推理作家協会賞」にも受賞しているし。
 期待しちゃうよね?そりゃもう、つい期待しちゃうじゃないですか。
 驚天動地のトリック、意外な犯人、衝撃の結末!!なんてものを、思わず求めてしまった私がバカだった…。

 考えてみたら私はこのシリーズにそんなもん最初から求めてなかったんですよ。
 火村とアリスのラブラブ旅行記、それで良いんです。十分です(笑)。
 二人の「新婚さん」を楽しめれば、それで満足すべきでしょう。
 まー、つまり、それだけミステリとしては不満だということですが(爆)。


 だって時間的制約がある割に、前半はダラダラしすぎ。そして案の定、後半はドタバタ。
 しかも探偵が解説している所に、のこのこと犯人が自分からやって来るんですよ。何じゃそりゃ。犯人がそんなにいきなり都合良く来るか?
 確かに犯人は現場に戻る、とはいいますが、それにしても…。

 あまりにも都合の良いタイミングでやってきたので、もう二転三転するのかなー、と思いきや、やっぱりその人が犯人でしたよ。…マジか。
 ぶっちゃけ関係者の中で、体力的にも能力的にも性格的にも、一番犯人に近い人ですぜ?当たり前すぎて泣きそうだったよ、私は。

 途中で「これなら女性にも可能な犯行」とか何度も出てくるんだから、それなら犯人を女性にしろ!せめて共犯者とかね。ミスリードだとしてもお粗末だし(犯人っぽい女性が出てこないからリードする先が存在しない…)。
 そうすれば、とりあえず「意外な犯人」だけは成立できたのに。


 メイントリックも小粒だしね。ついでに密室にする必然性も無いしね。もっと言うなら、マレーシアである必要もないしね。
 そもそもどうせ第二の殺人を犯すんだったら、二つの死体を同じ場所に転がしとけば良かったんですよ。変なトリック使わないでさ。それなら誰が見たって相打ちになったのか、と思うじゃない。死亡推定時刻もほぼ同じなんだから。
 例え調べられて変な所が見つかったとしても、あのメイントリックを使うよりも、よほど安全で確実ですよ。トレーラハウスはきれいに掃除しとけば良いんだしね。

 それに第二、第三の殺人が無意味すぎます。ただ単に作者の都合で、死体をいっぱい出して華々しくしたい…、みたいな感じがしちゃいますよ。
 だから当然、犯人の動機もあいまいで説得力がなくて、結局だから何だったの?と首をかしげたくなるほど。

 もっと言うなら、途中でミスリードにもなっていない無意味な表現が多すぎて、それに踊らされたという感じ。前述の「女性にも可能」もそうですが、アリスの「××××(聴き取り不能)」とかね。
 あんなに思わせぶりに何度も出てきたら、あれがトリックに関係すると思うじゃない。例えばその聞き取れなかった言葉がすごく重要で、それが分からないからアリスは勘違いをするような、アリスの一人称小説であるが故の叙述トリック的なものがあるのか、とか。
 (いやまぁ、ある意味では大正解なんだけどね…苦笑)

 ダイイングメッセージ風の「001」も意味不明です。そんな工作する暇があったら、さっさと逃げた方が良いし、いつ人が外に出てくるかも分からないんだしね。

 そして「マレー鉄道」はほとんど関係ありません!ってそれも何だかなー。
 あの時間的制約があるというのも、あまり意味なかったし、功を奏しているとも思えなかったので、どうせだったらラストに二人がマレー鉄道に乗って感慨にふけるとか、そんな描写で終わったら良かったんじゃないのかな。せめて。
 無駄にゴロゴロ転がる死体、意味のない密室やダイイングメッセージ、唐突に始まる犯人の自供。どれもこれも二時間サスペンスドラマみたいですが、それでも二時間ドラマならちゃんとマレー鉄道の場面は出てくると思うよ?(笑)。


 それに何より不満なのは、「火村&アリス」の一番の魅力である、火村先生の内面に迫る描写がなかったことですね。
 彼は自分も人を殺したいと思ったことがあるために、殺人犯にシンパシーを抱きつつも、それが故に激しく憎む…、という二律背反な人なのですが(そしてそれこそが魅力なのですが)。
 今回の犯人はどこからどう見ても薄っぺらい悪人で、さすがの火村先生でもシンパシーの欠片も感じなかったようで、犯人を追い詰める様も、まるで火村先生らしからぬ姿でしたね。

 ああ、がっかり。とにかく色々がっかりだ。
 まー、それでも「30過ぎの独身男」二人で旅行に来させるという無茶を、平然とやらかしてくださる有栖川先生は偉大です。さすがの私でも一緒に旅行に来なくても良いんじゃ?と思ったよ(苦笑)。

 普通はこういう場合は、アリスが取材旅行か何かでマレーシアに来て、それで事件に巻きこまれて、犯人っぽい扱いにされちゃって、火村助けてくれーというような、そんな展開だよね。そこへ火村先生が颯爽と現れて、ちゃっちゃと事件解決、みたいな。
 でも有栖川先生はそんな無粋なことはしません。いつでも二人は一緒。どこへ行くんでも一緒です。あっはっは。ステキ。

 ところで私は有栖川有栖が「新本格」だとは知らなかったよ。ゴメン(笑)。
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by mgear | 2005-06-13 20:58 | 小説

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